地域で支えるということ

刑務所から出所する男性を受け入れた。それというのも、罪状が窃盗だけでなく、「女子高生を連れ去ろうとした」というなかなかパワフルな罪が影響してしまい、どこも受け入れてもらえないというからだ。

刑務所の担当者からは、「ほぼ100%何かしらの障がいを抱えているものの診断や治療を受けておらず、本人が『施設は規則で縛られるから嫌だ!』と言うため、後手になってしまい、更生保護施設もダメ、不動産屋はダメ、居住支援法人からも断られる。なんとかならないかと一縷の望みを抱いてのご相談です」と相談された。

そりゃあ、相談に乗るしかない。笑

「さて、どんな感じか」と、いつも通りに実態調査に行ってみたところ、「確かにどこも受けてくれない感じの方」だった。いや、「感じ」ではなく、「間違いなく」というほど。

しかし、私たちはこの方を受け入れた。様々なリスクは承知の上ではあったが、「本人が更生したい」という意向を示してくれたこと(嘘のケースが多いですが…)と、「メンバーで話し合った結果、こういった困難なケースに応じていくことが、私たちの役目である」と腹を括れたことで、この判断に至った。

受け入れた結果、まぁすごい。笑
ここではとても記せない出来事の数々。笑

さて、支援の話に移ろう。
この方を受け入れると判断する上で、「本人が望めば必要な診断や治療を受けられるよう支援する」ということを事前にメンバーで話し合って決めていた。生活の様子を見守る中で、気になった数々の事柄について本人と話し合った結果、「身体の震え」や「夜眠れないこと」、「不安感」といったことを赤裸々に語ってくれた。専門医の受診を提案してみたところ、「受診してみたい」ということになり、医療と繋げていくステップに移った。

ここからが問題であった。保健所に相談して作成した医療機関のリストを近隣の場所から問い合わせて行った結果、初めは親身に相談に乗ってくれるが、刑務所から出所した方であることを伝えた途端に病院側の態度が一変し、断られてしまうのだ。いったい、幾つの病院に相談をしたことだろうか。

ショック。

悔しさ。

最後の方には、怒りすら湧いてきた。

もちろん、刑務所からは様々な人が出所してくる。だから人として、病院側の判断も理解できる部分はある。ただ、私たちが支援していた方は、少なくとも更生のためにも、良くなるためにも受診を希望していた。加えて、私たちがサポートしていた。にも関わらず、会おうともしてくれない。中には、「院長判断で」というお断り文句もあった。信じられなかった。

その後、県の居住支援担当の方にもご尽力いただき、なんとか精神科を受診することができ、定期的な通院を開始することができた。だがしかし、この方は再犯してしまった。

犯した罪についてここで記すものでもないため割愛するが、個人的には再犯してしまった事実に対しては、「本人がやってしまったこと」であるからまだ諦めがつく。何が悔しかったかと言えば、「もっと早く医療機関を受診することができれば、適切な治療方法を早期に見つけることができれば、障がいの認定を受けて本人が希望する居宅介護(障がい福祉領域の訪問介護サービス)等の利用環境を整えてあげられれば、再犯することなく更生に向けて一歩ずつ進むことができたのではないか」ということだ。

私たちだけでは全てを解決することはできない。「居住支援」は、「単に住まいを確保する」だけでは十分ではない。「いかにして、配慮が必要な方々を、地域で支えるか」ということこそが、大切なのではないか。そう、強く感じた出来事であった。

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